調停や審判による相続財産の名義変更
遺言書が遺されている相続の場合、基本的に遺言書の内容が優先されます。
反対に遺言書が残されていない相続では、全相続人で財産の相続割合について話し合う「遺産分割協議」を行うことになります。
遺産分割協議は相続人全員が参加し、全員がその内容に合意の上で書面にする必要がありますが、相続人の人数が多い場合や相続人同士が疎遠となっている場合には話し合いが進まず、滞ってしまうことも少なくありません。
また、相続手続きでは大きな金額を扱うことが多いため、以前は仲の良かった相続人間でも揉め事に発展する可能性は非常に高いといえるでしょう。
原則、遺産分割は相続人同士で話し合って進めていきますが、どうしても話し合いがまとまらないない場合には家庭裁判所に申し立てて、調停や審判を行う方法もあります。
以下において、調停や審判による名義変更手続きについてご説明いたします。
調停による相続財産の名義変更
調停では、調停委員が相続人それぞれから言い分を聞いて具体的な解決策を提案するなど、遺産分割を話し合いで解決できるようサポートしてくれます。
調停を利用して遺産分割を取り決めた場合、調停の中でまとまった内容を裁判所書記官が「調停調書」として書類を作成してくれます。この調停調書を金融機関や各種手続き先に提出することで、名義変更ができるようになります。
<必要書類>調停から名義変更を行う場合
- 家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本
- 被相続人名義の預金通帳と届出印
- 預金を相続した人の戸籍謄本と印鑑登録証明書
※上記の他にも、金融機関によって必要な書類が異なる場合があります。事前に確認しておきましょう。
審判による相続財産の名義変更
審判では、法律において定められた相続割合である「法定相続分」に応じて分割方法を決定していき、決まった内容を「審判書」として書類にします。
ここで作成した審判書を金融機関等に提出することで、名義変更ができるようになります。
なお、審判書には法的な強制力があり、相続人の中に審判書の内容に不服のある者がいる場合、審判書の受け取りから2週間以内に高等裁判所へ即時抗告をする必要があります。もし、審判書の内容に不服があるにも関わらず2週間以内に抗告をしなかった場合は、いかなる理由であっても従わなければなりません。